経済・金融政策に関する提言

金融アセスメント

「怒り」を「知恵」にかえて今こそ「金融アセスメント法」を制定しよう

2.今こそ「金融アセスメント法」を制定しよう

第2部 対談:金融アセスメント法

金融アセスメントを議員立法で
参議院議員 櫻井充氏に聞く(WebSite

山口

私は、21世紀政策構想フォーラムというNPO(非営利組織)のシンクタンクを通して、金融アセスメント法を提言しているわけですが、これを実際に法案にして、さらに国会で成立させるということなると、やはり国会議員の人たちの理解と積極的な取り組みが不可欠です。

「法案を作ることぐらいなら、学者が何人か集まればできるだろう」と、素人は考えますが、そんな簡単なものではありませんし、そもそも私は経済学者であっても法律学者ではありません。

ですから、その他の様々な法律と矛盾しないような、きちんとした法案をつくろうと思えば、やはり国会議員が中心になって、参議院や衆議院の法制局などに所属する法律の専門家を動員して作っていくということが必要になります。

そのためには、私たちがやろうとしていること、あるいはその必要性を本当によく理解して、自分の問題として粘り強く取り組くんでいただける、そういう国会議員がいなければなりません。

櫻井議員は、まさにそういう議員の一人として、金融アセスメント法の制定に長い間取り組んでこられました。

私たちからすれば、非常に「ありがたい」議員です。

今日は、櫻井議員から、法律制定に向けての「思い」のようなものをお話いただいて、多くの方々に、私たちの取り組みの意義をより深く理解していただくための一助にしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

そこで、はじめに、議員がこの問題に関わるようになったきっかけのようなところからお話いただけたらと思います。

というのは、21世紀政策構想フォーラムというのは、政策提言を行うシンクタンクですが、あくまでもどの政党からも独立した組織で、櫻井議員の所属しておられる民主党と特別な関係にあるというものではないからです。

その櫻井議員がどうして私たちと関わるようになったのか、ということですが。

医者的な言い方をすれば…

櫻井

そうですね。やはり直接のきっかけは、金融システムの安定化のために公的な資金が使われるという問題をめぐって、いろいろ考えたことにありました。

当時、党の内外で様々な議論がありました。

しかし、おおむね議論は「金融システムの安定化のためなら、公的資金を使うのもやむをえないだろう」という方向に傾きつつあったのですが、私は、これで本当に金融システムが安定化するのだろうかという疑問をもっていました。

というのは、これは、「銀行の体力強化」を可能にしますが、「金融システム」を安定化させられないのではないか、そんな風に考えたからです。

私は医者ですから、医者的な言い方をしますと、「銀行」は「心臓」であり、「金融システム」は「血管」、そして「地域経済」とか「中小企業」はその血液を必要としている「抹消組織」にあたるのではないかと思うんですね。

実は、昔は心臓の病気で「心不全」(酸素が抹消組織まで行き渡らないこと)の治療をどうしていたかといいますと、抹消循環を減らして、大事な臓器である心臓と脳にだけ血液を循環するようにした上で、心臓の治療していたのです。

ところが、こういうやり方だと、「心臓はたしかによくなった」、ところが、抹消の循環不良から「手足が動かなくなりました」という人が結構出てしまったわけです。

そこで、最近の治療では、心臓を保護し、なおかつ抹消に血液を流して全身の組織にダメージを与えないように気をつけながら、心臓の治療も行うというやり方にかわったのです。

現在の政府の対策を見ていると、まるで昔の「心不全」の治療方法と同じではないかと思うのです。

つまり、銀行に自己資本比率規制を課して事実上貸し渋りを助長する、このことは、「心不全」治療の抹消循環を減らすことにあたるわけですから、いくら心臓の治療に該当する、公的資金を注入して不良債権処理を支援しても、銀行の体力が回復した時には、肝心の抹消組織が傷害されている、即ち、地域経済や中小企業がひどく疲弊してしまっている、そんなことになりはしないか、医者として直感的にそんな感じがしたわけです。

しかし、だからと言って、市場経済ですから、無理矢理銀行にカネを貸せとはいえません。

何かいい方法はないものかなと考えていたのですが、そんな時に、この「金融アセスメント法」に出会ったわけです。

これはお世辞でも何でもないのですが、「あっ、これだな」と思いましたし、本当に良い政策ですよね。

制度提案なしの「公的資金注入」への疑問

山口

櫻井さんは当時「私は医者で、経済の専門家ではない」と言われていましたけれど、その話を聞いて、私はなかなか「鋭いな」と思いましたね。

その心臓治療の「たとえ話」は、その後、講演などで金融問題を説明する際に、時々使わせてもらいましたよ(笑)。

櫻井

光栄です。ありがとうございます。

山口

さて、銀行にきちんと仕事をしてもらう。そのために公的資金も使う。

そういうことだとすれば、政府は銀行が役割をきちんと果しているかどうかを調査したり、あるいはきちんと役割を果すよう促す制度的な仕組みを作る必要があります。

そういう制度を作ることを国民に約束して、はじめて銀行に公的資金を注入するべきだったと思いますね。

けれども、そうした制度的な提案なしに公的資金を注入してしまった。

櫻井

そうです。そのために、実際には、公的資金注入後も貸し渋りは続いて、中小企業の方々は非常に苦々しい思いをされてきました。

特別信用保証制度というのができて、とりあえず急場しのぎをしたけれど、これでは銀行の「体質改善」にはならない。

銀行の体質が変わらないということを前提として「それじゃあ国が保証するから、カネを貸してやってくれ」ということで、この制度ができたのですから。

石原東京都知事の銀行向け「外形標準課税」と同じで、国民は喜ぶけれど、それは銀行にきちんと仕事をさせるための仕組みではない。

銀行の体質は依然変わらない。これをどう変えていくかということこそが問題なんだと思います。

それから、新しい制度の提案なしに公的資金を注入したために、銀行行動に対する監視や誘導は、依然として官僚任せになってしまった。

この事によって、むしろ官僚支配を強めるだけの結果になってしまったわけです。

山口

そのとおりですね。櫻井さんは「重要なことは国民投票で決めるべきだ」ということを盛んに主張されていますが、それと同じで、これからの行政は、何よりも地域住民とか国民とかの参加を促していく、国民参加のもとでいろいろな事が行われていくような仕組みを作っていく、そういうことにもっとエネルギーを使うべきです。

そのためには、情報公開ということがなければならない。

しかも、国民から見て、わかりやすい形でそれを行う必要があります。

金融アセスメント法というのは、一種の情報公開法なんです。

官僚型規制から市民参加型コントロールへ

櫻井

金融アセスメント法も、たしかに銀行行動をある程度コントロールすることを企図したものですが、官僚の裁量や認可権にばかり依存した、市民不在型の、従来のものとは、かなり違っています。

一定の価値判断のもとで情報公開を行って、利用者の反応を通して銀行行動をある程度誘導する、こういうことを基本にしたものですね。

しかし、こういうやり方は、これまでの日本の行政の仕組みにはあまりなかったから、なかなか理解されにくい。

党内でも、民間の経済活動に規制を加えるような法律を出すのはいかがなものか、といった趣旨のことを言う議員はまだかなりいます。

山口

そうですか。それは困ったことですね。たとえば、ここに紙コップがある。

そこには、この紙コップを作るために地球の森林がこれだけ犠牲にされましたという「情報」が記載されていたとします。

そうすると、消費者はこれを買うのはよそう、ちょっと高くても再生紙で作ったコップを買うことにしようと動く。

そうすると企業も、再生紙でコップを作ろう、その方が売れるぞということになる。

一定の価値観で整理された情報をわかりやすく消費者に伝える。

そうすると、その情報に反応して消費者が動く。

その消費者の行動が企業を動かす。これからは、こういう形での市場経済のコントロールが必要です。

官僚任せの、強権的な規制だけでやっていく時代ではないですよ。

かといって、全くのコントロールなしでは、地球があぶなくなって、生活が破壊される。

金融も同じで、銀行に関する的確な情報開示を行うことで、利用者の行動に影響を与えて銀行をあるべき方向に誘導する、こういうことが求められているわけです。

貸し手の銀行と借り手の中小企業の立場は対等になっていない

櫻井

私もまったく賛成です。

ところが、金融機関がどういう企業にどれだけ貸すかということは、そもそも金融機関の勝手じゃないか。

そういう民間の経済行為に対して、公的な規制を加えるのはまずいのではないか、こう考える人もいるんですよ。

山口

一時期の規制緩和ブームの影響でそういう人がたしかに増えましたね。

規制批判さえすれば、「新しい政治家」だと思っている。マスコミもそういう扱い方をしますしね。

櫻井

私も、そういう考え方はおかしいと思っています。

民間の経済行為だから口を出すべきではないと主張している人々は、基本的には二つのことを忘れているように思います。

一つは、借り手である中小企業と貸し手である金融機関との関係が、けっして対等の関係ではないということ、つまり、銀行の方が圧倒的に強いということを忘れています。

そのために、中小企業は様々な不当な扱いを受けています。こういう関係を行政的にある程度補正していくことは、むしろ政治というものか担わなければならない当然の責務だと思いますが、そういう発想がないのです。

「銀行業務の公共性」ということが忘れられている

櫻井

それから、もう一つ。金融機関とくに預金を扱う金融機関の業務には、一定の「公共的」性格があるのだということ、これも忘れられています。

山口

しかも、その公共性には、ブックレットでも指摘したように、「社会的に要請されている望ましい分野」に資金が「円滑に供給」されること、という意味が含まれている。

櫻井

日本経済の健全な発展に、地域経済の発展やその担い手でもある中小企業の活躍は不可欠です。これはもう一種の国民的合意だといってもいいでしょう。

そうだとすれば、そういう分野に資金が「円滑に供給」されているかどうかを調査・公表したり、あるいはそういう方向へ一定の行政的な誘導を行うというのは、いってみれば当たり前のことです。

金融機関業務の「公共性」を維持するために公的資金を投入したという経緯からしても、むしろこれは国民に対する行政の責務でもあるわけです。

法制局に「法案骨子」を作らせた

山口

ところが、頭の固い連中にはその辺のことが理解できない。

櫻井さんには、本当に、粘り強くがんばってもらわないと。

櫻井

ええ。がんばりますよ。

私の選挙の時のキャッチフレーズは「立ち上ろう。夢、あきらめないで!」というものだったのですから。

ちょっと、いや、かなりクサいと、皆からからかわれましたが。(笑)

山口

いやいやそんなことありませんよ。いい言葉だと思います。

櫻井

ありがとうございます。でも、がんばったおかげで、いろいろ成果が出てきました。

たとえば、法制局に法案骨子を作らせました。

この件でも、山口先生にはだいぶお世話になりました。

法律は自分で作ってもいいのですが、私一人では、何年かかるかわかりません。

やはり、議員立法を作っていくためには、法制局にやる気になってもらわないといけません。

そこで、法案骨子づくりをお願いしたのですが、山口先生もご存知の通り、本気になってくれるのに半年かかりました。

でも、おかげさまで、説明だけはうまくなりましたが(笑)。

出来あがってきた骨子案の名称は、「金融の円滑化に関する法律案」というのですが、それには、この法律の「基本理念」を規定した条項があって、こう書いてあります。

  1. 金融については、国民経済におけるその果すべき役割の重要性にかんがみ、社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金が十分に供給されることを旨として、その円滑化が図られなければならない。
  2. 金融の円滑を図るに当たっては、国民経済の健全な発展のためには地域経済の発展及び中小企業者の事業活動の活性化が重要なことにかんがみ、これらの分野に効果的に資金が供給されるよう配慮されなければならない。
  3. 金融の円滑化を図るためには国民が個々の金融機関の特性を容易に知ることができる環境の整備が重要であることにかんがみ、金融機関に関する情報の開示が図られなければならない。」

この基本理念は、誰しもが賛同する内容です。

山口

本当に少しずつ「夢」に近づいているという感じがしますね。

櫻井

そうですね。お互いに、「夢、あきらめないで」、がんばりましょう。

山口

今日はどうもありがとうございました。

TOPHOME > 経済・金融政策に関する提言/金融アセスメント > 2. 第2部 対談:金融アセスメントを議員立法で