経済・金融政策に関する提言

金融アセスメント

「怒り」を「知恵」にかえて今こそ「金融アセスメント法」を制定しよう

2.今こそ「金融アセスメント法」を制定しよう

第1部いま、なぜ「金融アセスメント法」なのか

T 金融危機から学んだもの
「中小企業のための金融システムを創出すべき」という声

さて、まず図1を見ていただくことから話しを始めたいと思います。

これは、東京のある中小企業団体(東京中小企業家同友会)が会員企業に対して行ったアンケート(500名を対象とし、131名より回答、1999年7月5日集計)の結果です。

中小企業の努力が生かせる環境づくりで重要だと思うもの

「中小企業の努力が活かせる環境づくりで重要だと思うもの(3つまで複数回答)」という問いに対し、「中小企業のための金融システムを創出すべき」という答えが58%とトップの地位を占めていることがわかります。今回の金融危機で、中小企業経営者たちがどんなに「痛い目」に会ったか。このアンケート結果は、その深刻さを如実に物語るものだといって良いでしょう

ところで、こうした中小企業経営者たちの声に、行政担当者や政治家は一体どのように応えようとしているのでしょうか。「公的資本注入で金融危機は収まったではないか」。「特別信用保証制度で中小企業の資金繰りは楽になったではないか」。こんな風に考えて「問題はすでに基本的には解決したはずだ」などど認識している人も少なくないと思われます (注1)

しかし、それは明らかに「問題発見能力」の欠如です。「公的資本注入」がなされ、特別信用保証が実施されたにもかかわらず、今日あらためて「中小企業のための金融システムを創出すべき」だと経営者たちが訴える理由はどこにあるのか。そこには、公的資本注入や特別信用保証だけでは解決されないどのような問題が隠されているのか。いわばその「問題探し」を積極的に行って、解決の方向を見出していく。――

今日、行政マンや政治家に求められるのはそうした姿勢なのだということを、まずもって強調しておきたいと思います。

中小企業経営者たちは何を「不当」だと感じたのか

中小企業経営者たちに金融問題を体感させたものは、いうまでもなく金融危機と「金融再生」政策が引き起こした「貸し渋り」や「貸し剥がし」(金融機関からの一方的な貸金回収)にほかなりません。しかし、そうした体験が、「中小企業のための金融システムを創出する」必要性を感じさせるまでに至ったのには、それなりの理由があります。それは、一言でいえば、そうした体験を彼らが明らかに「不当」なものだと認識したことです。

  • (1)不良債権問題の原因は銀行の杜撰な経営にあるのに、なぜ、そのツケを「貸 し渋り」や「貸し剥がし」の形でわれわれ中小企業が負わなければならないのだ ――という不当性。
  • (2)自分が作り出した問題のツケを平気で中小企業に負わせるような(中小企業に 冷たい)銀行をなぜ公的資金で救ったり、税金で不良債権を買い取って後始末をしてやらなければならないのか――という不当性。
  • (3)借入の際に銀行に個人保証をとられているため、われわれがひとたび経営破綻 を引き起こせば身ぐるみはがされることになるのに、当の銀行の経営者たちは、経営を破綻させ「税金」で後始末してもらっても、その個人財産を投げ 出すことはまったくない ――という不当性。
  • (4)特別信用保証制度はたしかに有り難いが、これはリスクをすべて国に負わせて の貸出だから、結局国民が負担を背負うことになり、問題を引き起こした銀行は何ら責任をとらないことになるが、それでいいのか――という不当性。

まだ、ほかにもたくさんあると思いますが、重要なのはこうした「庶民感覚」 的ではあるが正当な「不満」から、制度上の問題を摘出すること、そして解決に向けた具体的方策を見出していくことにあります。それは、たんに「銀行 に中小企業向け貸出を増やさせればいいんだ」ということでもないし、したが ってまた「中小企業向け貸出が増えれば問題は解決する」というような性質のものでもないのです。そうしたたんなる「量的」な問題ではなく、もっと「質的」 な、まさに「システム」上の問題なのです。そのようにれば、中小企業経営者たちがあらためて「中小企業のための金融システムを創出する」必要を訴えて いる意味も理解できると思います。

解決すべき「システム」上の3つの問題

上述したような中小企業経営者の正当な「不満」――これは、中小企業経営者に限らず、近年国民の多くが抱いた「不満」でもあると思いますが――の背景には、「システム上の問題」として、以下の3つの問題があることを指摘できると思います。

第1は、銀行業務の「公共性」に関する法的規定、これまできわめて曖昧であったという問題です。

第2は、銀行と借り手との間でなされる取引上の慣行が、これまで中小企業に著しく不利であったという問題です。

第3は、これまでの金融行政が官僚による裁量的な指導に極度に依存してきたために、金融システムの利用者たちに「もの申す」機会がまったく与えられてこなかったという問題です。

こうした問題を解決することが、とりもなおさず「中小企業のための金融システムを創出する」ことになるのではないでしょうか。

実は、「金融アセスメント法」を制定すべきだという主張は、同法の制定をもって上記のような「金融システム上の問題」を解決しよう、あるいは少なくとも解決に向けてその「第一歩」を歩みだそうとするものなのです。

以下、順追って説明していきたいと思います。

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